[File17] 近代日本美術協会
新しいつくり手への門戸を開放する「サムホール公募展」、
絵筆による地域おこし「地展」

2016/4/14 ※更新2022/7/20
これまでの受賞作から。左より、「古民家の里」坂本貴彦 、「摂津峡」櫻井聡
「Autumn tints」岡孝敏、 「めぐりあう2」尾崎慶子、「SIESTA」谷口和正、「穏やかな夜明けを見る月」紺野友子
小品だけを募集する、近代日本美術協会主催の公募展「サムホール公募展」が好評だ。メインの展覧会事業である「近代日本美術協会展」と出品者を棲み分けながらも、互い展覧会の活性化に役立っているという。理事長の渡辺祥行に、協会の幅広い活動を聞いた。
大作は描けないけれど……
2016年7月で17回を迎える「全国サムホール公募展」。サムホールとは、22.7×15.8センチの絵画サイズのことで、この大きさに適う作品をジャンル不問で募る。
「たとえば美術大学や専門学校を卒業したとたん、絵を描くことと縁遠くなってしまう若い人がたくさんいます。描くことに興味のある一般の人にとっても状況は同じです。そのような人にとって、公募展が普通に募るような大きな作品を制作するのは、興味はあっても難しい。しかし、サムホールサイズなら自宅で、たとえばキッチンテーブルでも描くことができます。描きたい、発表したいという気持ちのある人たちの受け皿になれればと続けています」と、主催の近代日本美術協会で理事長を務める渡辺祥行は説明する。
「全国サムホール公募展」は、審査の手順もいわゆる公募展とは異なる。協会が指名した審査委員ではなく、会場に訪れた人に好きな作品を投票してもらい、その集計に基づいて賞が決まる。大賞に選ばれた作品を協会が10万円で買い上げるというシステムだ。
「この展覧会の特徴は、出品者の年齢層が若いことです。中心は30〜40歳台で、学生の方も参加しています。近代日本美術協会は本展でも若い会員が多く、よく他の公募団体の人から驚かれます(笑)。」
サムホール展の好評を受け、本展となる「近代日本美術協会展」でも2016年から小品公募部門が新しく加わった。こちらは8〜20号の範囲で作品を募る。サムホール展で初めて作品を発表した新しい描き手にとっても、美術館で開かれる公募展に挑戦できる絶好のステップアップの機会となるだろう。
2016年2月に開かれた第16回全国サムホール公募展の会場の様子
絵を描いて地域おこし
別のユニークな試みとして、全国公募「地域を描く美術展」=「地展」がある。
これは近代日本美術協会と連携するNPO法人地域美術展協会が主催するもので、絵画を通した地域の魅力の発見、まちおこしをするボランティア活動だ。
毎年、テーマとなる地域を指定して開催され、全国から美術愛好家が参加。一年間を通じ四季折々の各地の豊かな自然や歴史、風物などを題材に作品を制作し、プロジェクトの締めくくりとして、その地域で作品展を行なう。最近のテーマ地としては、栃木県の壬生町や大分県臼杵、愛媛県砥部町などがあり、これまで30年近く続いている。
「各地の市町村の商工観光課などと協力して開催しています。絵筆の力で町おこしをして地域の方に喜んでいただけるということで、描き手もやりがいを感じています。春先に行なう一泊二日のスケッチ旅行を毎年楽しみにしている参加者も多いですね」
「近代日本美術協会展」を軸に、切り口を変えたさまざまな取り組みをしている近代日本美術協会。絵を描く楽しみを広げてくれる協会の多彩な活動にこれからも注目したい。
理事長の渡辺祥行
(左)「栃木県壬生町を描く絵画展」の様子
(右)「栃木県壬生町を描く絵画展」会場
千葉県館山市でのスケッチ会
(取材・構成=竹見洋一郎)
公募情報
近代日本美術協会
  • ◆ 第17回全国サムホール公募展 ※終了致しました。
  • 会期:2016年 7月17日(日)〜23日(土)
  • 会場:東京交通会館B1ゴールドサロン
  •  
  • ◆ 第43回 近代日本美術協会展 ※終了致しました。
  • 日程:2016年10月30日(日)〜11月6日(日)
  • 会場:東京都美術館
  •  
  • ◆ 第32回地展「上島町を描く絵画展」 ※終了致しました。
  • 会期:2017年3月開催
  • 会場:愛媛県美術館新館

第17回全国サムホール公募展
ART公募内公募情報 http://artkoubo.jp/kinbiten/
団体問合せ
近代日本美術協会展本部
〒162-0814 東京都新宿区新小川町6-27-1101
090-8286-3517
mail@kinbi.jp
http://www.kinbi.jp

地展
NPO法人地域美術展協会
http://chiten-japan.art.coocan.jp



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