artkoubo MAGAZINE
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[File45] 自由美術協会
自由闊達で個性的な仲間と共に

2018/7/30 ※更新2022/7/7
「自由美術14人展」 会場風景 2018年6月 ギャラリー絵夢 新宿
1937年に長谷川三郎、浜口陽三、山口薫らにより結成され、今年で81年目を迎える自由美術協会。30年にわたり同会をベースに作家活動を続け、昨年平和賞を受賞した一ノ澤文夫氏に、自身の創作と会に所属する意義について話を聞いた。
一ノ澤文夫(いちのさわふみお)
  • 1953年 岩手県出身。武蔵野美術学園油画科修了。
  • 1983年 初個展。
  • 1988年 自由美術展初出品。
  • 1990年 同佳作賞
  • 1992年 同会員推挙。
  • 本展、地方展に出品する傍ら、個展やグループ展も多数開催する。
  • 第81回自由美術展 平面部 平和賞

「自由美術14人展」 2018年6月 ギャラリー絵夢 新宿

一ノ澤文夫《緑》「自由美術14人展」 出展作

絵は、その時々の自分を映す「自画像」
  • 6月某日、『自由美術14人展』を開催中の一ノ澤文夫さんに会いに新宿のギャラリーを訪ねると、会場には文字通り、自由美術協会所属の作家14人によるバラエティに富んだ作品が展示され、その中に一ノ澤さんの新作『緑』があった。昨年の自由美術展で平和賞を受賞した、曖昧模糊としたニュアンスのある色形が印象的な『響』とは趣を変え、大胆なまでに形を排した色面の空間で魅せた作品だ。
  • 「少しでも変わりたいという思いがあるので、できるだけ同じ状態に留まらないよう意識しています。『響』は、自分の心の中に宿るさまざまな不安が、得体の知れない形となり、ビリヤードのようにコンコンとぶつかりうごめく。その響きを表現しました。一方の『緑』は、“形”を崩すことにより、何か違うものが得られるのではないかと試みた作品です。きれいな花も、空間があるから美しさが生きる。形あるものよりも、むしろ何もない余白に空気感や存在感のようなものがあるような気がして、最近はそれを追求しているところです」
一ノ澤文夫《響》2017年 第81回自由美術展 平和賞
  • その時々の自分の中のあらゆる経験や時間、感覚から生み出される絵は“自画像”だと一ノ澤さんは言う。テーマや題材を決めて画面に向かうのではなく、ただ自らの内に浮かび上がってくる思いを丁寧に掬い、筆先に乗せていく。一昨年の大作『水害』も、自分が何を求めているのかわからないままに描き続け、完成に近づいた頃、画面の中に現れた雨や岩、暗闇に横たわる人の姿に、ようやく自らを突き動かしてきた感覚の源に思い至った。
  • 「その年、故郷の岩手県岩泉が台風被害に遭ったんです。河川が氾濫して高齢者施設が流され、何人も亡くなった。そのニュースを見た時の思いが、きっとこの絵に現れたのだと思います。探っていたものがわかるのは、大抵いつも仕上がる直前。パズルのピースがはまるように、あ、これだったんだと、ピタッとくるんです」
一ノ澤文夫《水害》2016年 第80回自由美術展
若い作家にも仲間と切磋琢磨できる環境を
  • 一ノ澤さんと自由美術協会との出会いは、遡ること40年。当時、油画を学んでいた武蔵野美術学園で、敬愛する先生の数人が自由美術協会に所属していたことからその存在を知った。
  • 「学生たちと垣根なく関わってくれて、人間的にも個性的な先生が多かったので、こういう方たちが所属している自由美術協会ってどういうところなんだろうと興味を持ちました。それまで公募展に対して大作で技術を競い合うような、アカデミックなイメージを持っていたんですが、自由美術の絵はテクニックをひけらかすようなところがなく、伸び伸びしていて個性的だなと。それが初めて会の展示を見た時の印象でした。作品の傾向は時代によって変わっても、派閥もなく自由闊達な会の雰囲気は今も変わっていませんね」
2017年 第81回自由美術展会場風景 国立新美術館・六本木
  • 初出品から30年。近年は、毎年秋に国立新美術館で開催される自由美術協会の本展と夏の地方展(東京自由美術展)を中心に、会や学生時代の仲間数人とのグループ展など、年間10回ほど展覧会に出品。また、同じく画家で自由美術の会員である妻との二人展も隔年で開催するなど、意欲的な創作活動を続けている。
  • 「長く続けていれば波もありますが、低調期もずっと描いていたので、やっぱり絵が好きだったんでしょうね。グループ展の予定を入れると、調子の良し悪しに関わらず、やらざるを得ないというのもありますし、周りの仲間の存在は大きいですね。一人で絵と向き合っていると、どうしても主観的になって、客観的に自分の絵を見られないんですよ。精神的にも変にいい気分になったり、逆に落ち込んだり。もし一人で描いていたら、今の自分の絵はなかったと思います」
  • 公募団体に所属することの最大の利点は、切磋琢磨する環境が持てることだと一ノ澤さん。若い作家にも経済的負担とならずに続けていけるよう、会費を公募団体の中では最も安い範囲の額に設定しているのも同会の特徴だ。年齢もキャリアも関係なく、作家同士が自由に意見を語り、互いに高め合える環境が、ここには整っている。
(取材・構成=杉瀬由希)
  • 2017年 第81回 自由美術展受賞作品より
  • 平面部
圖子秀達《風の海》自由美術賞
小暮芳宏《章魚》靉光賞
坂内義之《喜怒哀楽》靉光賞
美濃俊幸《AREA -起点》平和賞
  • 立体部
山崎 史《プロメテウスの鎖 (野外)》《夜空―星と雲 (室内)》自由美術賞
松本正一郎《シャバーニ & アニー》平和賞
公募情報
自由美術協会
第82回自由美術展 ※終了致しました。
  • 日程
  • 2018年10月3日(水)~10月15日(月)
  • 会場
  • 国立新美術館
  • 搬入日時
  • 9月23日(日)・24日(月)
  • 作品
  • 平面・立体・版画 他の公募コンクール展に
  • 陳列されたことのない作品。
  • 出品料
  • 3点まで12,000円(1点増やすごとに1,000円)
  • なお出品既定、出品目録、出品票は、自由美術協会のホームページhttp://jiyubijutsu.org/からダウンロードしてください。

第82回自由美術展

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