artkoubo MAGAZINE
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[File86] 新槐樹社
第68回新槐樹社展開催-次の世代を担う若手作家の活躍に期待

2024/03/05
  •  2月7日から19日まで、国立新美術館にて、第68回新槐樹社展が開催された。
  •  新槐樹社は昭和33年に設立され、第1回新槐樹社展を開催。以来、毎年回を重ね、全国の各支部会員の作品と公募による一般作品を展示している。
  •  今回の第68回展では、若手からベテランまで、幅広い年代の作家が参加。絵画部門は、20号と30号以上の2部門で、意欲溢れる作品が国立新美術館の壁を飾った。
  •  今回は、68回展にも出品している若手会員の野澤志水(栃木支部)さん、中村光夫さん(茨城支部)に新槐樹社での活動や今回の展覧会について話を伺った。
野澤志水さん(新槐樹社所属会員)68回展作品の前で
―はじめに、新槐樹社に入会したきっかけを教えてください。
野澤:今から12年ほど前になりますが、ある時、荒井慧先生(栃木支部長)の作品を目にする機会があり、とても感動したことが新槐樹社との最初の出会いでした。その後、荒井先生の作品の実物が観たいと新槐樹社展を見に行ったのですが、展示会場に色々なジャンルの個性豊かな作品が並んでいることに驚きました。私はそれまで、公募展というのは、その会ならではの作風のようなものがあると思っていたのですが、新槐樹社展では作家が思い思いに表現していました。それを見て、「ここだったら若手でも自由に表現できるのかもしれない」と、私もチャレンジしてみることにしました。
中村:私は、茨城支部の方からの紹介がきっかけです。私は制作のほかに絵を教える仕事もしているのですが、教室の場所を借りていたギャラリーのオーナーが入会を勧めてくださったのです。実は、最初はそれほど乗り気ではなかったのですが、入ってみると楽しくて。新槐樹社展は会場が国立新美術館なのもよいですね。明るい壁に飾られた自分の作品を見ると、自宅で見るのとは全く違う印象を受けるので、色々と勉強になります。

中村光夫さん(新槐樹社所属会員)第68回展の作品の前で

―普段どのような活動をされているのでしょうか。
野澤:私の所属している栃木支部では、毎年1回、支部展を開催しており、それが一番大きな活動ですね。コロナ禍で縮小してしまいましたが、以前は支部のスケッチ旅行や親睦会なども行っていました。そのほか、イベントではありませんが、会員の先生にアドバイスをいただいたりということは、日常的に行われています。
中村:茨城支部も支部展を開催していて、毎年会員約10人が参加しています。茨城支部は以前、会員がとても少なかった時期があったのですが、近年は若手も増えて、活動も活発になっています。
―今回の第68回展に出品した作品について、教えてください。
野澤:私は主に猫や人物をモチーフにした絵を描いていたのですが、今回は『すべての武器を楽器に』という平和をテーマとした作品にしました。前回67回展からの連作になるのですが、制作を始めたのが、ちょうどウクライナ戦争が始まった頃で、ある方が言っていた「すべての武器を楽器に!」という言葉を思い出し、作品テーマにしようと考えました。
野澤志水「すべての武器を楽器に!Ⅲ」油彩
野澤志水「すべての武器を楽器に!Ⅴ」油彩
中村:私は以前から「時間」をテーマに作品を制作していて、「平面の中で時間の移り変わりを描く」ということずっと考えています。20歳の女の子を描いた今回の作品では、見る人にこの絵の中に入って、自分もこの女の子と同じ時間を生きるような感覚を味わっていただきたいですね。絵画は一瞬をとらえるものですが、たとえば、羽根が空に舞う様子を描けば、ふわっと浮いて、地面に着くまでの時間というものを感じられますよね。この作品でも、女の子の周りを舞う紙片で、時間というものを表現しようとしました。
中村光夫「宙を視る(そらをみる)」
中村光夫「瞑想する時(メイソウする時)」
―これからやってみたいことや目標はありますか?
中村:売れる絵を描いていかなければいけないという現実があるので、やりたいことをやるのはなかなか難しいのですが、そんな中でも、なるべく面白いことを考えていたいですね。日頃から、気になる言葉に出会ったら手帳に書き溜めるようにしているのですが、後から手帳を見返して、選んだ言葉をテーマに作品を制作することもあります。明確な目標というより、日々の制作の中で、自分の表現を追求していきたいという思いが強いですね。
野澤:私は具象を描いてきたので、これから、抽象画にもチャレンジしたいですね。詩をモチーフにした抽象画や映像など、実験的な作品にも興味があり、もっと前衛的なこともしてみたいと思っています。また、絵を教える仕事を通じて文化に貢献したいという思いもあるので、子どもたちが自由に表現できるようなお手伝いもしたいですね。そのためには、まずは自分自身がもっと自由に、新しいことをしていかなければと考えています。
―最後に、若手作家に向けて、メッセージをお願いします。
中村:もし公募展に応募しようか悩んでいる方がいらっしゃったら、まずは「入ったらいい」と言いたいですね。あまり考えすぎると行動できなくなってしまうものなので、まずは出すと決めてしまうこと。「うまくなったら出そう」では、何年も経ってしまいますから。はじめは緊張するかもしれませんが、絵を描く人は皆優しいので、心配しないで大丈夫ですよ。
野澤:私も、入会する前に、「自分でも大丈夫なのだろうか」と少し悩んだので、二の足を踏む人の気持ちもわかりますが、新槐樹社は先生方が皆さんほんとうに親切で温かく、派閥や上下関係などもほとんどないので、安心して大丈夫ですよ。入会すると、どの先生にも気軽にアドバイスをいただけるので、学ぶことも大きいです。若い人も増えているので、ぜひ私たちと一緒に新槐樹社を盛り上げていきましょう。
―ありがとうございました。
 新槐樹社は昭和33年に設立(前身の槐樹社は大正13年に結成)されて以来、創立当時の「限りない探求」「生涯を創作に向けた情熱」「絵画する姿勢」の教えを受け継ぎ、活動を続けている。近年は若手作家も活躍しており、次の時代を担う新しい世代への期待も大きい。第68回新槐樹社展は国立新美術館で2月19日まで開催された後、兵庫県立美術館(3月5~10日)、京都市美術館別館(5月14~19日)に巡回する。
(文・構成=村串沙夜子)
第68回新槐樹社展新人賞受賞作品
ニヴォン里宇子「呼応ab」
高田哲夫「optical distortion Ⅰ(視覚的ひずみ)」
第68回新槐樹社展会場風景
 
 
 
 
 
彫刻工芸と絵画Ⅱ部屋展示
 
陶芸
公募情報
 新槐樹社
68回新塊樹社展
  • 会期
  • 2024年2月7日(水)~19日(月)
  • 本展会場
  • 国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2)
  • 兵庫展
  • 2024年3月5日(火)~3月10日(日)
  • 会場:兵庫県立美術館
  • 京都展
  • 2024年5月14日(火)~5月19日(日)
  • 会場:京都市美術館 別館
作品公募
  • 搬入日
  • 2024年1月29日(月)及び1月30日(火)
  • 部門
  • 小品公募絵画20号あり。
  • 出品料
  • 一人2点まで10,000円1点増すごとに2,000円。作品の大きさ絵画部は30号以上、彫刻は高さ0.3~3m、面積m²以内、重さ80kg以内。陶芸lは一辺の長さ20cm以上、陶芸llは茶陶、小品。
  •  
  • 詳細は公式ホームページへ
  • https://www.shinkaijusha.jp/

68回新塊樹社展のポスター

ART公募内公募情報 https://www.artkoubo.jp/shinkaijusha/
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