artkoubo MAGAZINE
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[File93] モダンアート協会
幅広い作品が集まる、ヒエラルキーのない平等な会

2025/4/24
「純粋なる芸術運動の為に新しい方向を示す世代の秀れた美術家群によって、21世紀への橋を架ける役を果たす機関」として、1950年に村井正誠や小松義雄、荒井龍男、山口薫、矢橋六郎など気鋭作家20人により創設されたモダンアート協会。その活動や会の特徴について、「第75回モダンアート展」を開催中の上野・東京都美術館で、同協会事務局の都築邦春氏と事務局長の木島隆夫氏に話をうかがった。
若い感性を生かした自由で斬新な表現に期待
―多様なジャンルのバラエティに富んだ作品が展示されて見ごたえがありますね。
  • 都築 モダンアート協会の作品部門は「絵画」「写真」「版画」「彫刻」「デザイン」「スペースアート」の6つのジャンルに分かれているので、抽象から具象まで、素材もサイズも表現も多種多様な幅広い作品が集まっています。木島さんは版画、私はスペースアートの部門に所属していますが、スペースアートはかつては「生活美術」というジャンル名でした。生活美術というと家具や食器など日用品イメージがありますが、実際につくっているのはそういう実用的なものとは無関係な作品なので、誤解がないようスペースアートに名前を改めたという経緯があります。
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  • 木島 会場は第2回のモダンアート展以来、ずっと東京都美術館で開催させていただいています。上野という場所柄、わざわざ美術館目当てに来なくても、買い物や公園を散策するついでに足を延ばしていただけるので、個人的にはとてもいいところだと思っています。また開催時期が毎年4月なので、上野恩賜公園の桜がちょうど見ごろなんですよ。お花見がてら来ていただき、作品を楽しんでいただければ嬉しいですね。
―会の特徴や魅力はどのようなところにあると感じていますか?
  • 木島 一番いいと思うところはヒエラルキーがないことです。組織といってもつくっているのは人間ですから、長く継続するほどキャリアや性格などによって力関係の階層が生まれやすいものですが、モダンアート協会はそれが一切ありません。みんな仲間という意識なので、新会員から何十年という古参の会員まで、同じ立場で自由に話ができる。年齢や実績に関係なく、一人の作家として尊重し合い、対等につきあえるんです。それは私が1989年に初めてモダンアート展に出品した時から変わりませんし、伝聞によると発足した当初からそういう気風の会だったようです。
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  • 都築 展覧会の図録も、なかには会の中心人物から順番に作品を掲載している美術団体もあるようですが、モダンアート協会は会員も、準会員も、会友も、一般も五十音順です。そのほうが見たい作家の絵を探しやすいという利点がありますし、見る人も先入観なく公平に鑑賞できます。第30回展のときに初めて画集をつくったときも、最初は会員の中から希望者を募り、お金を払ってもらってカラーで掲載していたのですが、会員限定では平等ではないということで、その後は作品の掲載サイズを全体に少し小さくして入選者まで入れるようになりました。
―モダンアート展以外にはどのような活動を行っているのですか?
  • 木島 毎年秋に、その年のモダンアート展で受賞した13名の作家の作品を集めて展示する「受賞作家展」という展覧会を開催しています。会場は、今年も去年と同じ、東京・銀座の銀座第7ビルギャラリーで行う予定です。以前は名古屋、京都、福岡で本展の巡回展を行っていましたが、諸般の事情でそれはなくなり、現在は全国にある18支部それぞれでモダンアートの名を冠した地方支部展を意欲的に開催しています。去年は静岡や徳島、山口、岩手、埼玉、福島、京都など、半数を超える支部で展覧会を開催し、好評をいただきました。
―最後に、アートに興味のある方、公募展に出品を考えている方にメッセージをお願いします。
  • 都築 モダンアートは、歴史的にはさまざまな分野で最先端の作品が生み出された1930年代が最盛期だったと言われていますが、私たちは若い人たちの新しい表現に期待しています。モダンアート協会は、さまざまなジャンルの人たちに広く門戸を開いているので、創作活動をしている人はぜひ出品してほしいですね。
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  • 木島 特に三次元の作品は、いろいろな意味で自由な分、新しい表現の余地が残されていると思います。実際、最近はスペースアートやデザインのジャンルで、今までなかったような斬新な作品が見受けられるようになり、作家の方たちがこの会に興味を持って出品してくださることを嬉しく思っています。若い人たちが出品してくれると、ベテランにとっても刺激になるんですよ。会全体にいい風が吹くことによってお互いにプラスになり、会がさらに盛り上がる。そういういい循環を生み出すには、やはり一にも二にも人材なので、新しい作家との出会いに大いに期待しています。
(文・構成=杉瀬由希)

都築邦春 先生「いもむしⅢ」スペースアート

引っ張ると尺取り虫のような動きが楽しい木の玩具。板を積層して切った断面の模様も美しい。

木島隆夫先生「静謐の精祈・天使の髪R7-3」版画

手作業で版を何度も重ねて刷ったシルクスクリーンの作品。デジタルアートと見まがう人も多い。

第75回モダンアート展受賞者作品
協会賞 ニッカー賞 ターレンスジャパン賞 中村 柊輝「広がる」彫刻
優秀賞 新日本造形賞 大山 文子「カメレオンとロマネスコ」版画
優秀賞 ホルベイン賞 中川 佳代子 「故淡・組1」絵画
  • 佳作賞 SOMPO美術館賞 東美賞 岡田 美帆
  • 「~次世代のトリックアート~生物界 図形の天才達の闘いⅡ」絵画
佳作賞 リキテックス賞 浅野 則夫「輝」写真
佳作賞 植木 政光 「ナチュラル2025」 スペースアート
佳作賞 髙嶋 榮子「記憶の蒼Ⅴの2」スペースアート
奨励賞 マツダ賞 赤間 利晴「異次元の風景ZQ」絵画
奨励賞 トークロ賞 築山 一也「愚かな生き物の汚れたち」絵画
奨励賞 ターレンスジャパン賞 大沢 一喜「廃管徘徊」スペースアート
新人賞 クサカベ賞 中川 雛「ヤリミズノカナエ」スペースアート
新人賞 クサカベ賞 鈴木 惇介「世相の音Ⅰ」絵画
新人賞 ニッカー賞 丸山 丸「妊婦」
会場内の様子
 
公募情報
 モダンアート協会
第75回 モダンアート展
  • 会期
  • 2025年4月2日(水)~4月16日(水)
  • 搬入日
  • 2025年3月19日(水)~3月20日(木)
  • 搬入時間
  • 10:00~15:00(時間厳守)
  • 搬入場所
  • 東京都美術館(上野公園内)地下3階モダンアート展搬入受付
  • 搬入方法
  • ※出品規定に従って搬入口に作品を搬入する
  • 出品料
  • 1点10,000円、2点12,000円、3点14,000円(画集代含む)
  • *30歳以下は半額、学生は無料。
  • ・2部門以上にわたる出品の場合、部門ごとに上記と同様。
  • 出品数
  • 各部門とも3点以内
  • 出品メモ
  • [平面作品]
  • F130号(ヨコ・タテ可)まで
  • 絵画部門はF20号以上、F130号(ヨコ・タテ可)まで
  • S型作品は天地左右182cmまで
  • ・厚さ30cm、重量50kgまで
  • ・額縁・フレームは5cm以内
  • [立体作品]
  • 高さ270x底辺200cm四方まで
  • ・重量1000kg/平方メートルまで
  • [スペースアート]
  • タテ230xヨコ150cmまで
  • ・ヨコ150cmまで、重量50kgまで
  • ・出品者の責任においてつり具等の装着をしてください。
  • 公式HP
  • https://www.modernart-kyokai.com/
  • ※2025年の会期は終了しました。

第75回 モダンアート展のポスター

ART公募内公募情報 https://www.artkoubo.jp/modernart/
団体問合せ
  • モダンアート協会
  • 〒331-0065 埼玉県さいたま市西区二ツ宮 55-31 都築邦春方
  • 080-4359-5596
  • http://modernart-kyokai.com/
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