1970年に斉藤敬一、増山金作、宗川清司、高瀬勝之、根岸定男、田中孝、千葉好男の7名が参画して創立された一期会。設立以来、「互いに認め合い、励まし合いながら誠実な展覧を常に心がけている」という。1976年から東京都美術館を会場に展覧活動を続け、2006年以降は国立新美術館にて年一回「一期展」を開催している。今回は、10月2日~14日に開催された第58回一期展を訪れ、会長の山田精一氏、副会長で、今回内閣総理大臣賞を受賞した福田惠氏に話を伺った。
左「ウンブリアの古都」
右「トスカーナの古都」 油彩
会として、若い才能を発掘、支援していく
―はじめに、一期会について、教えてください。
- (山田)一期会は、封建的な画壇から脱却し、自由で斬新な絵画を目指す美術団体です。
- 1970年に埼玉県北部に住む方々を中心に設立されました。初代の会長は90歳を過ぎていますが元気に描いていて、今年も出品しています。公募団体としては歴史の浅い方かもしれませんが、皆でがんばってやっています。
―会員の方はどのような方が多いのでしょうか。
- (山田)趣味として楽しむ方、画家を目指す方、プロの画家として活動する方などさまざまです。他に職業を持った方、主婦の方のほか、絵を生きがいとして専念している方もいます。会員が高年齢化していく一方で、若い人が会員になってくれたり、出品してくれたりもしています。美大在学中の方、美大入学予定の高校生もいますよ。
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- (福田)絵画教室などで人から紹介されて入会する方が多いですが、最近はインターネット経由で入会する方が増えていますね。この「ART公募」を見て、そこから会のホームページに進んで、出品してみたいと問い合わせが来ることも多いです。初出品の方は「どういう会なんだろう?」と思われるでしょうから、インターネットで色々調べて、出してみて良かったから続けてみよう、となるようです。
―日頃の活動について教えてください。
- (山田)毎年秋に開催している「一期展」がメインの活動で、そのほか、スケッチ旅行や懇親会なども行っています。絵というのは見方によるものですから教えるというものではありませんが、会として場を提供するのは大事なことだと考えていますので、人物デッサン会なども行っています。
―そのほか、一期会の特徴はありますか?
- (山田)入会のハードルを下げて新しい才能を発掘していきたいので、学生割引、65歳以上割引というものがあります。会員になると、学生は半額、65歳以上は最初の1年は半額にしているほか、一期展の出品料は、40歳未満の方は無料です。
盛況に終わった58回一期展
―58回一期展をご覧になっていかがですか?
- (山田)今年が初出品という方も多かったですね。年齢に関係なく、みんながんばっているなと感じます。海外からの観光客の方もたくさん見に来てくださって、盛況でした。国立新美術館という場所柄もあると思いますが、ここ数年は、海外からの来場者がとても増えています。
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- (福田)会場を見渡すと、年々レベルが上がって、質の高い作品を出品されている方が増えていると感じます。私が入会して以降、毎回、「前よりもレベルが上がった」と思うんですよ。公募団体というのは何もしなければ先細りになってしまうものなので、若い人たちを発掘することも大事ですね。
―「一期展」の特徴を教えてください。
- (山田)41回一期展までは東京都美術館で開催していました。今のレンガの建物ができる前のクラシックな建物の頃からお世話になっていました。42回からは、国立新美術館ができるということで、こちらで行っています。ここは天井が高く、広々としたスペースを活用できるのでいいですね。壁を外して、作品同士がぎゅうぎゅうにならないように展示をしているので、来訪者がゆったりと作品を見ることができるのではと思います。
- 出品については、制作姿勢、出品、参加等については個人の自由で、新しい視野を志す意欲作品を尊重しています。今はいろいろな素材を使う人がいますから、平面であればそれ以外は基本的に自由です。会員のみなさんの努力の結果だと思いますが、出品数は年々増加しています。
―賞も多いですね。
- (山田)そうですね。賞が充実しているのは一期展の特徴と言えると思います。内部賞のほか、内閣総理大臣賞、文部科学大臣賞、三県の知事賞をはじめとする外部賞も数多く授与しています。外部賞をつくるのは事務方としては大変なことも多いのですが、受賞すると制作の励みになるものなので、頑張って続けています。
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- (福田)今は若い人が公募展離れしていますので、そういう意味でも賞を充実させて、一つの励みになってこの会で続けてみようという人が増えたらいいなと思っています。
―今後の展望について、教えてください。
- (山田)「第60回一期会展」という節目の年がもうすぐやってきますので、それに向けて、日頃の活動を充実させていきたいですね。年々、作品の質が高くなっていることを感じますので、みなさんにがんばってもらいたいですし、会員も増やしていかなければと思います。
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- (福田)最近の若い人はインターネットから応募される方が多いので、ホームページ等の情報発信も今後の課題ですね。次の世代の人には、どんどん活躍してもらわないと。
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- (山田)会員同士、切磋琢磨することも大切ですので、交流の機会を作ってきっかけづくりができたらと考えています。これから、会員の高齢化が進んでいますので、ゆくゆくは力を持った若い方に良い形でバトンタッチできればと思っています。
(文・構成=村串沙夜子)
一期会大賞・都築亞美世 「夢」(無著・世親の喜寿祝い) P100・日本画
内閣総理大臣賞・福田惠 「無花果の木の下で」 S100・油彩ミックス
文部科学大臣賞・黒岡照子 「晩秋の上高地」 F80・和紙画
毎日新聞社賞 金子一男「河辺の街蘇州」 変100・油彩
東京都知事賞 岩﨑沢子「水と緑の惑星」 F130・油彩
埼玉県知事賞 吉永孝 「猫まゆ Ⅰ」 F80・油彩
群馬県知事賞・前田美知代 「聞こえる」 F100・油彩
東京都議会議長賞・山口登 「雨のムーランルージュ」 100・パステル
埼玉県議会議長賞 春日正利「霙(みぞれ)」 S60・油彩
群馬県議会議長賞 大竹清仁「夢の女」 F120・油彩
増山賞・杉田純子 「ゴンドラ遊覧」 P80・水彩
上毛新聞社賞 池田あつみ「009」 F80・アクリル
評論家中野賞 日下大輔「若き自責の雷鳴と蛇」 F50・水彩
評論家清水賞・堀江恵理子 「海の賑わい」 Part 2 F30・アクリル竹ペン
彩美堂賞 新宮始 「花 2」 F30・水彩
彩美堂賞 冨田貞夫 「鵜の巣断崖」 F40・切絵
東美賞 山下祐樹 「未完成交響曲第2楽章」 F100・油彩
東美賞 塩路民恵 「熱帯の楽園」 F50・水彩
クサカベ賞・津田則子 「南の海から」 F30・日本画
クサカベ賞 中山波江 「森の古木A」 F60・油彩
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