「美術によって生命の歓喜に満ちた社会をつくりだす」ことを理念に掲げ、1952年(昭和27年)に創立された中央美術協会。75回の節目を迎えた昨年は、委員による小品展を行ったほか、75回記念賞・新人大賞を追加し、通常より多い418点を展示した。「第76回中美展」(2024年11月9日~16日)会場で、加藤賢亮理事長に話を伺った。
―現代美術・洋画から紙版画・切り絵・鉛筆画・コラージュ・CGなど多彩な作品が並んで、テーマやモチーフもさまざまですね。どのような方が出品されていますか。
- 今回の展示はちょうど400点でした。協会員は支部展に出品したものを描き直したり、さらに描き込むなどして本展に応募する方もいますし、若い人ではインターネットで公募展の案内を見て応募する人が増えています。
- ジャンルは自由です。近年の傾向としては洋画が最も多く、次いで多いのが混合技法、その次が水彩となっています。割合としては少ないものの、日本画や墨絵の出品もあります。
- 広く「生命感に満ちた」作品を呼びかけており、委員による作品には国際問題や社会問題をテーマにしたものも多く見られます。今回はイスラエル・パレスチナ紛争などを描いたものもありました。
―若い世代はイラストレーションや画像を加工したものなど、自由な表現も多く見られました。
- 時代に沿った公募展に変えていく取り組みの一つとして、近年はシニア層だけでなく若い世代や子どもにも力を入れるようにしています。
- 25歳以下の応募料を無料としていて、幅広い年代から応募があります。さらにU18賞・U12賞を設けていることもあり、18歳以下の出品が年々増えています。18歳以下の入選者には無料で作品集を贈呈しています。
- 今のところ出品の大半が肉筆絵画ですが、今後はCG作品の出品が増える可能性があります。パレットで画材をこねたり、自然の中に埋没して風景を描くといった身体感覚ありきの肉筆も残っていくと思いますが、生成AIの登場によって絵画技法を身に着けていない人でも手軽に表現できるようになりました。そうした作品をコンセプチュアルアートと捉えるか、除外するのか、応募規定をどうするかが美術公募団体共通の課題となっています。
- AIにはプラスの面もあればマイナスの面もあり、ここ数年が激動の期間となりそうです。この大変革に絶望や光明を見ることになりそうです。
―子どもたちのコラージュ作品は、画材以外にもいろいろな素材を使っている点が印象的でした。同じスペースに展示したチャリティー企画は初めてでしょうか。
- 子どもは特にユニークな作品が多いです。絵画教室の先生の指導もあって、なかには今回の受賞作のような大作を出品する子どももいて、毎回変化に富んだ展示空間になっています。
- 同じ展示室の一画に設けた「能登半島地震チャリティー葉書絵展」は、今回が初となります。美術による社会貢献活動として、復興支援のために設けました。同時に小品の再評価を念頭に置いたものでもあります。
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- 先の400点とは別に、委員による作品を60点ほどを会のほうでシンプルな額縁をつけて展示販売し、多くの方にご購入いただきました(全額寄付)。継続開催を検討しています。
―関東・東海・九州と7支部がありますね。
- 各支部では当協会の選考委員が講師を務めるスケッチ会ほか、さまざまな講座を開いています。協会員の大半が趣味で絵画を始めた方々なので、筆の洗い方やキャンバスの張り方など、基礎的なことをレクチャーする講座もありますし、美術モデルを呼んでデッサン教室を開くこともあります。そうした場で協会員同士の交流が生まれることも楽しみの一つになっているようです。本展で入選すれば講評会に参加できるほか、入選者や受賞者との親睦会もあります。
- 協会賞(毎年1名)を受賞すると審査員の資格が得られるので、そこを目指すことがモチベーションになっている方もいらっしゃると思います。
―協会員220余名と、非常に大きな公募団体ですね。維持や世代交代はどのように行われていますか。また今後の展望をお聞かせください。
- 協会員の高齢化が進んでいる現状は他団体と同様ですが、全国に支部があり、絵画教室を主催している協会員も多いので、そこから新たに入ってこられる方が多いです。
- ご存じのように、当協会は児島善三郎(初代会長)、岡鹿之助(文化勲章受章者)、中川一政(文化勲章受章者)、清水多嘉示(文化功労者)、野口弥太郎などを指導者として郡山三郎によって設立されました。創設者の言葉、「創作の根源は自由である。一切の束縛を排して生命の躍動に歓喜しようではないか」の呼びかけ(「協会宣言」としてホームページに掲載)に感銘を受けて入ってこられる方が多くいらっしゃいます。
- 協会の維持には世代交代が不可欠ですので、引き続き若い世代や子どもの育成に注力していきます。
(文・構成=中山薫)
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