- 大正期に存在した「槐樹社」を前身とし、再興する形で1958年に誕生した「新槐樹社」。
- 権威に捉われず個の創造を尊重し、互いの多様性を力に変えながら、美術を社会へひらく自由で批評的な精神は、創設から70年を経た現在も脈々と受け継がれている。
- 「第70回記念 新槐樹社展」開催中の国立新美術館で、新たに委員長に就任した照山ひさ子、副委員長・中島忠、事務局長・大槻博路の3氏に、今展の出品作品の傾向や会の活動、今後のビジョンなどについて話をうかがった。
左から事務局長 大槻 博路氏 委員長 照山ひさ子氏 副委員長 中島 忠氏
16歳が初出品で入選! 若手の力作が光った70回記念展
―節目となる70回目の新槐樹社展、出品作についてはどんな感想を持たれましたか?
照山:高齢化が進み、病気で制作を休まざるを得ない委員やベテラン作家も増えてきたため、成熟した作品が減ってしまうのではと心配していました。ところが蓋を開けてみると、若い作家の素晴らしい作品が想像以上にたくさんあったんです。これは嬉しい驚きでした。最年少は16歳の高校生。初出品にして初入選という見事な結果を残してくれました。
中島:若い方の作品を見ると、これまで出品してこられた方々の作品とはずいぶん違うんですよ。写し絵の具象から、もっと感覚的な表現に変わってきているように思います。デザイン性のある絵も多く、非常に新鮮な印象でした。
大槻:そうした貴重な人材を育てて生かすには、審査する私たち委員が若い作家の感性や多様な表現をきちんと受け止め、正しく評価する目を持たなければなりません。その責任を思うと、私たちも精進しなければと気持ちが引き締まります。
―展覧会を観に来られたお客様の反応はいかがですか?
中島:私は毎年、観に来られた方と機会あるごとにお話しさせてもらっているのですが、皆さん決まっておっしゃるのは、「この会は観ていて楽しいですね」というお言葉です。団体によっては日展系や独立系のカラーがはっきりしているところもありますが、新槐樹社はそういう枠にはまらないところが特徴なので、作品が本当に多種多様なんです。間口が広いので、どんな絵でも出品しやすいと思いますよ。
照山:去年の新槐樹社展を観て興味を持たれて出品されたという方が、今年も何人かいらっしゃいました。色々な団体の展覧会をご覧になって、その中でも特に作品がバラエティに富んでいるということで、当会を気に入ってくださったようです。出品点数もここ数年は微増でしたが、今年はぐっと増えましたので、嬉しく思っています。当会は「絵画Ⅰ(30号以上)「絵画Ⅱ(20号)」「彫刻/工芸」「陶芸Ⅰ」「陶芸Ⅱ(茶陶、小品)」の部門があるのですが、すべての部門で増えました。今年は特に工芸部門に素晴らしい作家がたくさん現れたなという印象を持ちました。
―出品点数が増えた理由は何にあると思いますか?
大槻:ホームページをリニューアルしたり、インターネットでの情報発信を続けてきたことが、ようやく定着してきたのだと思います。実際、ホームページからの応募は最近非常に多いです。同時に、会のメンバーが自分の所属する支部の人や、その周辺の人たちに声をかけていることもあり、そこからの出品も増えています。みんな自分たちの会に対する確信と誇りを持っていますから、自信をもって勧められるんですよ。その確信を支えているのが、透明で公平な運営体制です。
照山:会計も明快で、委員総会の議事内容まで会報にすべて掲載し、皆さんに対してオープンにしています。会期中は受付入口に3年分の会報を置き、一般の方も自由にご覧いただけるようにしました。
大槻:会議自体はいつも侃々諤々ですけどね(笑)
照山:アーティストの集団なので、みなさん個性が強いですし、自分の意見をしっかり持っている人が多いんですよ。ですから意見の食い違いは当然あります。その違いをどう咀嚼して整理し、ひとつに束ねていくかが運営側の重要な役割だと思っています。
大槻:それだけ自由に意見を言えるのは、会が健全に機能している証拠とも言えますからね。みんなが会を良くしたいという思いを持っているからこそ、意見がぶつかっても議論を尽くして前に進めるんです。運営側の私たちも、うまくいかなかった点は素直に反省し、次へつなげていく。その積み重ねが大事だと感じています。
中島:今回、委員長が照山先生に代わったことも、大きな訴求力になっていると思います。大規模な美術団体で女性がトップに立つ例はまだ少ないので、そこに新しい風が吹き込まれる余地がある。大御所の男性作家が長く居座る旧態依然の組織では、若い芽が伸びにくいですからね。新槐樹社は新しい感覚で動き出したというイメージを、しっかり伝えていきたいと思っています。
作家が成長できるさまざまな場を用意
―新委員長として、照山先生が目指していらっしゃることは何ですか?
照山:やはり作家集団である以上は、まずは作品の質を高めていきたいですね。新槐樹社はプロばかりが揃っている団体ではありませんし、むしろアマチュア作家が大半を占めています。でもそのアマチュアの中から、本気で取り組む作家が必ず現れる。これまでもそうでした。そうした芽を見つけて力を伸ばし、世に羽ばたくプロ作家を育てていくことが、私たちの一つの目標です。
大槻:各支部で写生会や研究会を積極的に行い、制作に向き合う時間をつくっていることも、作家が力をつけるための重要な機会になっていると思います。あとは2月の本展のほかに、9月に秋季展を開催していることですね。秋季展は20号限定なんですが、このサイズが一番力量がわかるので、とても勉強になるんですよ。
―秋季展は、選抜制ですか?
中島:誰でも出品できます。去年は140名の作品が集まり、会場の展示スペースが一杯一杯で大変したね(笑)。その後のパーティーまでキャパシティぎりぎりで大盛況でした。
照山:秋季展は銀座のギャラリーで開催しているので、周辺の画廊のオーナー方もよく足を運んでくださるのですが、あるオーナーが出品作家の作品を非常に気に入り、彼女はその画廊で企画展を開くようになりました。さらにコレクターもつき、毎回ほぼ全点が買い上げになるほどの人気なんですよ。子育てをしながら創作を続ける40代手前の女性作家ですが、本展や秋季展に出すことで、こうしたチャンスに巡り会える可能性があるんです。彼女のようなトップランナーが次のリーダーとして新槐樹社を盛り上げてくれると期待しています。
大槻:大阪と京都で開催している本展の巡回展も、非常に重要だと思っています。東京とはもちろんですが、同じ関西でも大阪と京都では文化圏が違うので、観に来られるお客様の反応や評価も違うんです。そこで作品を見た方が会に興味を持ち、出品につながることもありますし、各支部にとっても活動の励みになります。
照山:新槐樹社は、最初は趣味として楽しんでいる方たちも広く受け入れています。活動を続けるうちに作家としての自覚が芽生え、自分の作品がある程度評価を受けるようになると、創作の楽しさが増してさらに努力を重ねるようになる。私たちはそうした一人ひとりの歩みを支えながら、新槐樹社の新しい歴史を築いていきたいと思っています。
(文・構成=杉瀬由希)
照山ひさ子氏
中島忠氏
大槻博路氏
第70回記念新槐樹社展
第70回記念新槐樹社展会場風景1
第70回記念新槐樹社展会場風景2
第70回記念新槐樹社展会場風景3
内閣総理大臣賞 益倉 初代「明日へ繋ぐ」
文部科学大臣賞 明石瞳「描と少女」
市賞 東海 林信「雨の銀座」
大阪市長賞 増田 亜紀「虹を紡ぐ子」
堀田清治賞 野澤 志水「パンドラの猫Ⅰ」
早川義孝賞 広島 幹恵「バラードⅠ」
第70回記念大賞 市嶋 世界人「Sketches of Spain -Ⅱ」
第70回準委員記念賞 千本 かよ「UGOMEKU 2026-Ⅰ」
努力賞 溝口 勝也「秋陽」
努力賞 西村 峯次「ホロホロ鳥の散歩」
第70回会員記念賞 杉浦 和彦「霊山」
第70回会友記念賞 坂東 瞳「侵食の輪郭」
新人賞 上野 道子「日常(にちじょう)」
新人賞 金永 治雄「冬の蓮沼/小春日和」
新人賞 大内 和子「ぼた雪」
マツダ賞 田村 健三郎「3.11大川小Tragedy10」
20号展・優賞 原田 海成「蒼の気配」
新槐樹社賞 岩館 由美子「幻影を追う」
工芸新人賞 松並 義孝「PEOPLES CHAMPION(金太郎・熊)」
工芸佳作賞 青木 紀雄「ひょうたん研ぎ出し(7色)」
陶芸努力賞 ローランド純代「わたしはここにいる。」
陶芸新人賞 吉岡 知子「月に宿る」
陶芸努力賞 川上 美智子「空海 そらうみ」
陶芸佳作賞 山根 彰正「玄曜(無釉曜変天目茶碗)」
公募情報
新槐樹社
70回記念新槐樹社展 ※終了致しました。巡回展開催します。
- 会期
- 2026年2月4日(水)~16日(月)
- 本展会場
- 国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2)
- 巡回展
- 70回記念大阪展
- 会期:2026年4月7日(火)~4月12日(日)
- 時間:午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで最終日午後3時)
- 会場:大阪市立美術館 天王寺ギャラリー(天王寺公園内)
- 大阪市天王寺茶臼山町1-82 電話:06-6771-4874
- 70回記念京都展
- 2026年6月9日(火)~6月14日(日)
- 時間:午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
- 会場:京都市京セラ美術館
- 京都市左京区岡崎円勝寺町124 電話:075-771-4334
作品公募
- 搬入日
- 2026年1月26日(月)及び1月27日(火) ※第70回記念展搬入は終了致しました。
- 部門
- 小品公募絵画20号あり。
- 出品料
- 一人2点まで10,000円1点増すごとに2,000円。作品の大きさ絵画部は30号以上、彫刻は高さ0.3~3m、面積m²以内、重さ80kg以内。陶芸lは一辺の長さ20cm以上、陶芸llは茶陶、小品。
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- 詳細は公式ホームページへ
- https://www.shinkaijusha.jp/
70回記念新塊樹社展のポスター
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