創立91年を迎えた美術公募団体・旺玄会が、銀座の画廊で旺玄展の受賞作家による選抜展を開催している。審査の公平性を徹底し、ひたむきな作家を応援する姿勢で知られる同会。制作意欲を高め合い、長年の作家人生を支える場として、多くの作家から信頼を集めている。今回、旺玄会の運営を担う佐々木氏と最賀氏、会員の坂出氏に、選抜展の意義や会の魅力について話を聞いた。
選抜展再開の理由
- 旺玄会で受賞者を選抜して行う選抜展は、実は今回が初めてではない。過去には大々的に行われていたが、一時期中断した後、5年前から再開した。旺玄会で受賞者を選抜して行う選抜展は、実は今回が初めてではない。過去には大々的に行われていたが、一時期中断した後、作家同士の研鑽の場でもあり、その真価が問われる受賞作家選抜展を開催する事により、これからの旺玄会を担って立つ作家の育成に繋げていく事を目的として再開、今年で5回目を迎え、有望な若手作家の意欲作が並ぶ、活気のある展覧会になっている。
- 「今年で旺玄展は91回。一般会員からも素晴らしい作品が多く受賞されているので、小規模ながら銀座の画廊で選抜展を行う意義はおおきいです。」と佐々木氏は語る。
- 展示は本展(5月)から翌年の本展までの“中間の時期”に開催されるため、作家にとっては制作を継続するモチベーションにもつながるという。今回は小作品に絞り、本展とは違うタイプの作品も多く並んでいるそうだ。
公平性を貫く審査と多様な受賞者
- 本展では30点以上の受賞作品が選ばれるが、選抜展にはその中から上位賞受賞者が参加する。
- 旺玄会の大きな特徴は、何よりも厳正で公平な審査である点だ。
- 「一般出品から上位賞を取った方が3名いますし、60歳以上を対象とした“銀彩賞”では96歳の方が受賞されました。どんな立場であっても作品だけで評価しています」(佐々木氏)
- 特定の先生に付かなければ評価されない、というような派閥も一切ない。作品そのものを横並びで見てジャッジする伝統が脈々と受け継がれている。
会員同士が高め合う“家族的な”雰囲気
- 坂出氏は約3年前に一般公募を通じて旺玄会を知った。
- 「会社勤めで制作時間は限られていますが、旺玄会に関わるようになってから“絵を描くのが当たり前”になりました。」
- 旺玄会には大きな団体にありがちな上下関係が少なく、互いを尊重し合う家族的な雰囲気があるという。
- 「派閥や馴れ合いではなく、個性を尊重しながら応援してくれる場所。ひたむきに描き続ける人が多く、その姿勢に刺激を受けます。」
- 坂出氏はそう語る。
- 年1枚(10号)しか描いていなかった頃から、今では100号の大作に挑むようになるほど創作への意欲が高まったと話す。
活発な展示と作家の交流
- 旺玄会では、本展や選抜展以外にも、審査員のグループ展、評論家の企画展など、多数の展示機会がある。
- 年間を通して、旺玄会作家の作品がどこかで展示されているほど活動は活発だ。
- 「忙しい中でも真剣に制作と向き合う作家が多く、“描けない理由を作らない”という姿勢を学びました」(坂出氏)
今年の最優秀賞は“版画” 作品の本質で勝負
- 旺玄展の最優秀賞である文部科学大臣賞は、例年大作の絵画が選ばれる傾向がある。
- しかし今年は、久々に版画作品が受賞した。
- 「版画はサイズの制約から評価されにくい面があるのですが、旺玄展ではアートとしての魅力全体を評価してくれる。技術的な細部より、作品の訴える力を見てくれるのがありがたい」(最賀氏)
- 版画が最優秀賞に選ばれたことで、「作品は大きさだけではない」という旺玄会の価値観が改めて示されたといえる。
- (まとめ)
- 旺玄会の選抜展は、作品そのものを正面から評価し、作家に創作意欲を与える場として再び動き出した。
- 公平性を徹底する審査、作品に意欲的に真摯に向き合う姿勢、家族的で温かい雰囲気、活発な展示活動――。
- どれも、長年にわたり多くの作家たちを惹きつけてきた理由だ。
- 「作品が伝える力を大切にする」
- 旺玄会のこうした姿勢は、今後も作家の挑戦を後押しし続けるだろう。
左から 最賀正明氏、佐々木實穂子氏、坂出光司郎氏 銀座あかね画廊にて
坂出氏が描いた佐々木氏の絵の前で
文部科学大臣賞 高橋 孝夫 「Cat‘s-eye」
会場風景
文部科学大臣賞 高橋孝夫(会員)
東京都知事賞 大木広美(会員)
旺玄会賞 濵田充代(会友)
牧野賞 清水英子(会友)
玉之内賞 溝江 晃(会員)
田澤八甲賞 三森麻衣子(一般)
銀彩賞 一戸忠治(会員)
SOMPO美術館賞 酒井真紀(会員)
上野の森美術館賞 大橋常男(会員)
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