artkoubo MAGAZINE
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[File69] 汎美術協会
いかなる状況下でも表現活動を続けていくために

2021/11/09
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2020年春から恒例の展覧会の開催を見送ってきた汎美術協会が、2年ぶりとなる「2021汎美秋季展」を東京都美術館で開催した。活動を制限された1年半、会員はどのように過ごし、どんな思いでこの展覧会に臨んだのか。そしてこの先、どんな展開を考えているのか。前半は代表の中西祥司氏に、後半は会員の青染レイコ氏に、それぞれお話をうかがった。
中西祥司氏 東京都美術館会場にて
1年半の自粛期間中に成長を遂げた作家たち
――まず、2年ぶりの「秋季展」開催に至るまでの経緯や思いなどを教えてください。
中西 コロナ禍で美術館自体が休館になったり、美術館は開館しても会の中で開催の賛否が割れたりしたことから、去年の汎美展、秋季展、今年の汎美展は中止という選択をしてきました。今春の汎美展に関しては開催することも可能でしたが、公共の福祉と表現の自由とのせめぎあいの中で、最終的に安全性を重視する意見が多数を占め、開催を見送ることになりました。
 表現者として活動している作家にとって、表現活動は作品をつくることばかりではなく、展覧会で発表することによって成り立っているので、それを止めるということは非常に大きな意味を持ちます。今回、開催の賛否を話し合う中で、創作のスタンスや意識の持ち方は会員によりさまざまであることがわかりました。制作活動の継続、作品をつくり発表することによって、自分の仕事が定着し、それを糧に次のステップへ進む。そういう意識を持ち、表現の自由を大切にして活動を続けていく作家が増えていくことが、会としては望むことであり、大切だと思っています。
――大規模な展覧会が開催できない中で、皆さん、どのようにモチベーションを保っていたのでしょうか?
中西 他の団体の展覧会に出品したり、個展やグループ展を開催したりしながら、活動を続けてきた人が多いですね。ただ、かなり大きな作品を出品できる春の国立新美術館と秋の東京都美術館は、多くの作家にとって活動の柱になっているので、発表できないストレスは大きかったのではないかと思います。
――今回の「秋季展」は、その鬱積した思いを発散したような、エネルギッシュな作品が多く見受けられました。
中西 出品者は前回より10名ほど減り、出品数も少なくなっているんです。しかし、展示してみたら想像以上に作品の質が高く、また、作品間の空間も十分に取れて、観やすい充実した展覧会になったと思います。
毎回、多摩美術大学の絵画科名誉教授・堀浩哉氏に講評をお願いしていて、今年はクローズドで開催したのですが、作家たちが自分の作品について自分の言葉で語れるようになり、かなり高度なディスカッションができるようになりました。全体としてクオリティが上がっていると堀氏もおっしゃっていましたが、私の目から見ても大きな成長が見られた作家が何人もいました。
作家は、講評でより良い作品にするためのヒントやサジェスションをもらい、自分でもう一度どうすれば良いか熟考し、そこで得た気付きを次の制作に反映して成長していきます。そういう意味でも、この1年半の自粛期間は決して無駄ではなく、銘々が自分の作品を熟成させる期間になったのではないかと思います。
来年こそ念願の「ベルギー展」実現を
――コロナの今回の開催ではどのような工夫をされたのでしょうか?
中西 従来とは違う、安全に運営するためのシステムを導入しました。たとえば、これまで搬入は会員が20~25人ほどで行っていましたが、今回は7、8人に制限しました。出品料は全て振込にし、展示位置の抽選は汎美の理念を実行していく上で非常に重要な役割を持っていますが、それもズームで実施しました。展示作業も、今までは出品者全員が来場して自分の作品を陳列していましたが、業者を増員し、展示委員の8人までに削減。また、受付や会場管理はこれまでの6、7人から2人に絞り、業者を二人体制にしました。搬出も遠方の人やリスクが高い人は来場しなくて済むようにしました。
展覧会運営全体で、本人の意思を尊重しながら、やれる人だけでやるという体制にしました。こうして簡素化や省略化を図ることにより、コロナ禍だけでなく、他にいろいろな障害が生じたとしても開催は可能だということを、今回手ごたえとして実感しました。
中西祥司氏 断片化された光の記憶「荒ぶる大地」「水の驚異」「猛烈な風」「拡がる火」「空(くう)」
――今後はどのような活動を予定されていますか?
中西 去年、開催する予定だった「ベルギー展」を、来年はぜひ実現したいと思っています。ベルギー・ブリュッセルでの展覧会は、今年の秋季展にも出品しているベルギー人作家、パトリック・ジェロラの協力のもとに進めていた企画です。参加希望者は22人ほどいて、そのうち12人は現地まで行く予定で着々と準備を進めていましたが、開催直前にコロナの影響で渡航不能になり、延期しました。海外、特にヨーロッパは、小さい頃から授業の一環で美術館に行き、作品を観て自分の感じたままに意見を言うという教育を受けているので、一人ひとり見方にオリジナリティがあって面白いんですよ。そういう反応に触れることは、作家にとっては貴重な体験にもなると思います。
 もうひとつ計画しているのは小品展の導入です。今は「汎美展」「秋季展」は30号以上2枚、60号以上1枚を出品条件としていますが、これからは会員の高齢化がさらに進み体力的に大きい作品を描くことは大変になります。また、初めて出品する人にとっても大きい作品はハードルが高いでしょう。小品も認めることによって、幅広い人たちに参加していただき、会員も出品し続けられるようにしたいと。いろいろ工夫をしていきながら、次の世代に汎美術協会の活動のバトンを渡していきたいと考えています。
自分のエネルギーを振りまきながら
――久しぶりの「秋季展」に出品された感想を聞かせてください。
青染レイコ氏 「#(ハッシュタグ)繋がる」
青染 美術館での展示は1年半ぶりだったので、やっと手足が思い切り伸ばせたような、そんな解放感を感じました。美術館以外ではグループ展などを開催していましたが、美術館は天井の高さがあるので、ギャラリーとは違うインパクトのある作品をダイナミックに展開できるのが魅力。そのメリットを生かした美術館ならではの展示が、やっとできたという思いです。
――今回のインスタレーション作品「#(ハッシュタグ)繋がる」は、何から着想し、どのような趣旨で制作されたのでしょうか?
ハッシュタグをイメージ
青染 今回の作品の構想は、『上方への競りあがる「勢いあるもの」や天からの降り注ぐ「暖かいもの」それらを繋げたい』です。タイトルは今回使いたい素材から制作していた色とりどりの木製塗装パーツを重ねていたら娘が「ハッシュタグだね」と言ったのを構想と併せて名付けました。私のハッシュタグは複雑に考えず多くの人との繋がりと捉えての作品です。みんなが縦にも横にも斜めにも繋がっていくイメージで制作しました。私は明るい色を好んで使います。気持ちがウキウキするからです。色付けハッシュタグは楽しく制作してたくさん並べたらより一層楽しくなってきました。
 私は、作品に対して思想だとかメッセージ性を強調したくはなくて、ただ作品を見てくれた人が楽しい気持ちになったり、元気になってくれたらいいなと思っているんです。作品を通して私のエネルギーを振りまいている感じですね。
「元気をもらえたわ」と感想をいただくと嬉しいです。
――青染さんにとって汎美はどんな会ですか?
青染 皆さん、すごく純粋で、勉強熱心です。美術談義が始まると止まらないくらい。皆平等の立場で懇切丁寧でしたが、そのせいかこれまでは会合も長引いて大変だったんですが(笑)、コロナになってすべてが少人数で効率化され、いい部分は残しつつ、変革が進みました。
 汎美は、私利私欲のない、無垢な団体ですね。派閥もなければ、この人について行けば得をするということもない。賞もないので、そんなことを狙う必要もないし、純粋に評価してくれる。会員は、損得ではなくて、ただこの団体が好きだから活動している。そう感じています。みんな脳みそが柔らかいので意欲的な作品で楽しいです。私は素敵な団体だと思います。
(取材・構成=杉瀬由希)
2021年 汎美秋季展会場
展覧会情報
 汎美術協会
2022 汎美展
  • 日程
  • 2022年3月9日(水)−21日(月) 休館日3月15日(火)
  • 会場
  • 国立新美術館 一階A
  • 種類・点数
  • 絵画、版画、写真、彫刻、オブジェ、インスタレーション等
  • 未発表の作品に限る(個展出品作は可)
  • 平面作品は合計で幅5.5m×高さ4.8m
  • 立体作品は床面3.5m×2m以内
  • 点数制限なし(下限は30号以上、合計60号以上)
  • 搬入時間
  • 2022年3月6日(日) 10:00−13:00(予定)
  • 出品料
  • 16,000円(一般出品者)30歳未満は半額
  • *注 出品料は改定する予定です。
  • 応募方法
  • 会員または事務局の推薦が必要ですが、
  • 出品作に対する審査はありません。
  • 当会の考え方や活動等に賛同し、出品を希望する方は、下記事務局に画歴と作品のコピーをお送りください。運営委員会にて検討させていただき、結果をお知らせします。
  • ホームページからの申し込みは
  • 「汎美展」を運営する美術団体「汎美術協会」 (hanbi.jp)
  • (なお、応募書類は返却しません。予めご承知おきください。)
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